ナフトピジルのまめちしき
今回は前立腺肥大症の治療薬でアドレナリンα1遮断薬のナフトピジルについてお話します。
前立腺肥大症に伴う排尿障害
アドレナリンα1受容体の選択的遮断を行い、尿道平滑筋の緊張緩和による尿排泄困難改善作用をあらわす。
男性にしかない器官である前立腺。
前立腺は、膀胱の下に存在するのですが、その機能は実のところあまり知られていないところが多くあるのです。
わかっている機能の一つとして、前立腺液を分泌することが分かっています。
前立腺液は、精液の一部となり、精子を保護したり、精子に栄養を与えたりして、その運動機能を助ける働きをします。
さて、そんな前立腺ですが、歳を重ねるにつれて大きくなってしまう人が多数存在します。
もちろんお歳を召したおじさま方全員の前立腺が肥大する運命にあるわけではありません。
前立腺が肥大する原因もこれまた不明な点が多いのですが、「男性ホルモン」が関与しているのは間違いないとされています。
歳を重ねることによって男性ホルモンを含む性ホルモンのバランスが崩れることによって前立腺が肥大してしまうのです。
前立腺とα受容体は密接に関連しています。
たとえば、激しい運動をした時、血圧が上がったような感じがしますよね?
これは、交感神経が刺激されて、血管が収縮したことによります。
交感神経が刺激されると、神経伝達物質がα受容体を刺激します。
このα受容体が刺激されることにより、血管が収縮されるのです。
これは、排尿時でも同じ働きが起きています。
たとえば、こんなとき
運動会の徒競争の最中
みなさんは思いっきり、全力で走ると思います。
当たり前ですが、こんな時におしっこが漏れてしまうことはありませんよね?
これはα受容体が刺激され、排尿が抑制されることによります。
では、前立腺肥大症の患者さんの場合
前立腺が肥大することによって、おしっこの出が悪くなってしまいます。
尿意を感じて夜中に何度も起きてトイレに行くものの、あまり出ない…
そういった患者さんには、α受容体の刺激を止めて、排尿を促進させてあげればいいのです。
なので、前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療には、α受容体遮断薬を用いるのです。
さて、今まではα受容体についてお話させていただきました。
しかし、そのα受容体、実は1種類だけではないのです。
α1A
α1B
α1D
この三種類が存在します。
これらの種類の違いをサブタイプといい、兄弟みたいにすこーしだけその特徴が違ってきます。
この中で特に注目したいのが、1番目のα1A受容体。
このα1A受容体は、前立腺に多く存在する受容体となっています。
すなわち、このα1A受容体を阻害することによって、尿道を広げることができ、排尿を促進することができるのです。
3番目のα1D受容体も、膀胱に多く存在します。
なんだか排尿に関係がありそうなところに存在してますね。
しかし、このα1D受容体は、阻害することによって排尿とはすこーし違った働きをするのです。
α1D受容体を阻害することによって、膀胱を拡張します。
そうすると、おしっこをより多く膀胱に貯めることができるのです。
つまり、どういうことか?
前立腺肥大症の患者さんは、夜トイレに頻繁に行くというお話をしました。
これは、膀胱に貯められるおしっこの量が少ないため、何度もトイレに行くことになってしまうためです。
膀胱に貯められるおしっこの量が増えれば、何回もトイレに行く必要がなくなりますね!!
今回のナフトピジル、実はこのα1D受容体を選択的に阻害するのです。
ちょっと変わったお薬ですね。